毎日新聞 1998.3.24 
”SOHOの草分け”河西保夫氏インタビュー


 編集者、プランナーとして学生時代から活動し、現在も出版・プロモーション企画をてがけるSOHO、(株)クラブハウス(東京都渋谷区)を経営する河西保夫さん(38)に、SOHOビジネスの現状について話を聞いた。クラブハウスの設立は1984年。若者市場をターゲットにした出版物の発行や大人向け遊園地の企画開発などを手がけており、カタカナ文字系SOHOの草分けともいえる。 最近も「SOHO独立開業ビジネスの素134」(クラブハウス刊、定価1360円)という最新SOHOビジネスの実例集を出版したところ、1000件以上の問い合わせが殺到し、SOHOへの関心が大変高いことを改めて知ったという。

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 SOHOという言葉が日本で聞かれるようになったのはここ2年くらいのこと。SOH Oは、小さな事務所や自宅を仕事場にするフリーランサーや中小事業者のことだが、大 企業のテレワーカーや個人事務所を構える弁護士、開業医などもSOHOだ。音楽プロ デューサーの小室哲也さんもSOHOと位置づけて良い。旧来型のSOHOに対して、 パソコン・携帯電話など情報機器やOA機器の低価格化に伴って身近になったインター ネットなどの電子ネットワークを駆使する専門職種が、最近注目されるデジタル型SO HOだ。SOHOの生まれた背景には、経済が成熟化していく中での民間経済主導、消 費市場経済の細分化がある。
 アルビン・トフラーが「第三の波」の中で指摘したこと が現実のものになって いる。生産者と消費者一体型のプロシューマー(創費者)形態が SOHOの特徴。ポスト工業社会に向かう中で、同じ現象が先進国で同時に起きている。
 『コンピューターを使っているのがSOHO』『在宅主婦の電脳内職』という単純な誤 解もあるが、SOHOはもっと多様で、むしろ人間本位のマルチメディア社会の実質的 主役とみたほうが理解しやすい。  SOHO経営はジェットコースターに例えられる。
  クラブハウス自体も一時期 の売上高は10人で6億円だったが最近は2人で1億円。従業員 という概念は薄く、音楽産業や映画産業と同様に業務単位でタスクチームを結成運営する ハリウッド型経営。当然、売上げや利益の振幅が激しい。SOHOビジネスは基本的に 受託による仕事。受注業務、雇用契約といずれも短期であることが、何年後の売上高は いくら、という計画が立てずらい構造になっている。
 しかし生活とビジネス組織を一体 化させた消費スタイルであるため、個々の経営構造は柔軟だ。  

 現在SOHOを掲げた 団体数はインターネット上にホームページを持っている 団体だけでも全国に140。 業種別、地域別にも特化したネットワークが多い。現 在、SOHOが国に収めている税 金は500万事業者で8兆円くらいと見られるが、公的補助は農業など既存産業に比べると 少ない。米国ではSOHOアメリカのように議会にロビイストを送り込み一元的な働きか けをSOHO側から行なっているが、日本はSOHO側、行政側ともに窓口が無い状態だ。
 一方、行政はテレワーク構想など地方自治体のマルチメディア取り込みへの動きが急。 しかし、SOHOへの認識不足から利用者のいないところに支援施設を作るなどミスマッ チが起きている。  SOHOの広がりで、今後、医療や保険・金融、電気通信、福利厚 生などSOHO支援市場が広がるだろう。すでにSOHOむけ共同オフィスなどの形で 建設業が本腰を入れているし、自治体もSOHO誘致に力を入れている。

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●河西保夫(プランニングプロデューサー・SOHOギルド事務局代表)
毎日新聞 1998.3.24 河西保夫インタビューより


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