倒産すらできないSOHOとウキャキャ大恐慌前夜?
ついに本格化し始めた大手企業の倒産の波。「金融、証券、保険ばかりではないぞ〜、ゼネコン、不動産、小売り、メーカーだって春までもつかどうか、わかんないよ〜、ウヒョヒョヒョ」年末年始、恐らく1000万人ぐらいのSOHOが、仲間と集まるたびにこの手の会話を繰り返したにちがいない。しかも、話題的に陰うつな表情にならざる得ないテレビキャスターとは対照的な嬉々とした様子で、なかにはウキウキして「だから、こーゆーことって(大恐慌のことかぁ!)何年も前から予定されていたんだから、今さら騒いでどーするんだろーね?」とか「失業して転職できないのは自分のせいだし、公的資金で損失分を救ってくれるのなら、俺たちはど〜なるのよ?零細個人事業なんて倒産すらできないんだからさ〜、ウキャキャキャキャ(アニメ笑い)」などと、酒の勢いにまかせて騒いでいるSOHO読者の姿が目に浮かぶ。
他人事のことのように書くのも卑怯なので自分の話をすると、山一の倒産以来、俗に言う大手一流企業関係者から「いやー、もう他人事じゃなくて、うちもいよいよSOHOの仲間入りかな〜なんてね...(笑)」という話題を何度ふられたことか。SOHO市場研究をしている担当者ですら、このレベルの認識なのだから、なにをかいわんや。そういう時には一応、「SOHOにすらなれない企業人って、ホントどうするんですかね?」とうそぶくことにしている。
社会の洗脳というのは恐いもので、ちょっと一昔(ベルリンの壁崩壊の頃)まで、世の中には「大企業=資産家/悪」VS「労働者=無産家/善」という構造がなんとなく残っていて、連合みたいな組合がメーデーという賃上げアップのためのセレモニーを開いていた。(もしかして今もやってる?)その社会では、失業は悪であり、すべからく人は働き、できれば安定した雇用関係が良しとされていた。
ところが最近では、「大企業=ヒエラルキー/悪」VS「消費者=ネットワーク/善」という関係にタームが変わってしまい、資本よりも情報のほうが市場維持に有効なため、もしかすると「数億人の独り言」でしかないインターネットに活路を見いだすという、狂ったようなトレンドが大企業を覆う始末。仮想世界が実体世界をリードするまで消費が高度化したとあっては、後に来るものは、破壊とデカダンスしか残されていないっていうのにね。
つまり何が言いたいかというと、時代の座標軸が転回してしまった後では、健全な雇用関係云々で世直し(不景気脱出)を叫んでも根本的解決はないということだ。
「自分が欲しい!」とか「時間を返して!」と叫んでいる消費者に売るものはすでになく、「女子高生向けのこの商品をコンビニでブレイクさせたいんだけど、秘訣を..」と依頼してくる企業人には「市場を知らない幹部をクビにして女子高生にその分ギャラを支払うべきでしょう」というアドバイスをするしかない。
ついでに言うなら、実体経済から10万光年は離れてしまった公務員・政府系というブラックホールの人々の半数を今すぐ離職させ、その犯罪的な退職金・年金を差し押さえ、新たに自由な契約雇用を創出しようとしているSOHOに投資していく、そんな欧米ではスタンダードな不景気脱出法しか残されていないはずだ。
失業・転職・独立するのは当たり前。変化していくことを恐がらない新しい社会ルールを作るしかない!
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●河西保夫(プランニングプロデューサー・SOHOギルド事務局代表)
「月刊SOHOコンピューティング」98年1号原稿より
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