SOHO GUILD


 虎ノ門インターネット研究会での
ギルド・カンファレンス
(一部抜粋,95年12月/日本財団)




【司会】 流れを簡単につまむと、つまめるもんでもないんですけれども、組織と広報という話が最初ございました。通常の組織から生み出される広報的な番組は見られないじゃないかという話と、その経済を維持していくためにマーケットを拡大していく、あるいはマーケットを創造していく。そのために、ライフスタイルの提案であるとか、あるいはシンボリック・マネジメントと僕は言っていますけれども、シンボリックなものをどう扱っていくか。こういうことが非常に重要であるという話をされていたように思います。
 この企画自体は事前説明しなかったんですが、通産省及び郵政省の支援プログラム への提案となっていまして、おそらく通産省は技術的なあれでだめなんでしょうとは 思いますが、郵政省はほぼ間違いなく行くんじゃないかという内容の事業プランでご ざいます。ライフスタイル提案というところから、マルチメディア社会を支えるべき クリエイター、プランナー、フリーランス、そういった個人の人たちというのは今、 組合に属していないですから、そのための事業協同組合をつくろうという話だったと思います。
 その組合が生協的な機能も持っている。情報生協のような機能を持っている。60 0万人の生協になっていくというような話だったと思います。これをひとつたたき台 にしながら、皆さん、いろいろ各人のご専門の部分もあるでしょうし、議論を進めていければなと思います。

  【k氏】 今、ホームページが250万分の1というお話があったんですが、この 「GUILD」というのは、加盟している人は使うということが第一義的なもの……?

【河西】 ではないです。

【k氏】 これを集合することによって、目立ちやすくするということですか。

【河西】 まず、オフラインとオンラインという考えがあると思うんですが、大多 数のマスの人たちはまだオフラインの上で生活していると思います。オンライン上で 、業務でインターネットを使ったほうがいいという人は当然いますけれども、我々の ターゲットになっている人たちも2種類いると思います。まず、オンライン上のビジ ネスのために、電子ギルドをつくるという点も当然あるんですが、自己アピール をしていく上で、単に経済効率が高いと.
 つまり一個人が全世界の人に自己紹介はできないです。ところが、インターネットがあれば、やり方によってはできるんですね。
 それと、先ほど質問のあった、250万分の1でなくて、うまくやればもっとアク セス頻度が高くなるというのは、世界にはこういう考えのものがまだないんですよ。 我々はもちろん欧米の似たようなネットワークの人たちに呼びかけをしていきますし 、必ずしも日本で完結する必要は全然ないと思います。


ギルドの登場は世界的潮流

 アメリカのあるベンチャーカンパニーが世界130カ国のテレビ製作会社の技術者、報道マンに呼びかけをして、ギルドをインターネット上でつくっています。日本ではTBSやNHKの人たちが個人的にどんどん参加しています。
 これはニュージーランドからでも、ベルリンからでも、どこからでもいいんですけ れども、多分、いろんな人が情報発信をして、相互にやり合う形になると思うんです 。ですから、そういう意味では一種の分野として、YAHOOがインターネットのイ エローページというふうになっていますように、電子ギルドという1つの概念が定着 すると思います。ですから、そういう意味では250万分の1では決してないです。

【k氏】 そうすると、何かそういう極というのができていくとか、そういうイ メージはお持ちなんですか。それに対して、ある大資本とか、既存の組織がそういう 動きをやっていくという可能性もあると思うんですが。

【河西】 ありますね。例えば、大企業とか大組織もオブザーバーという形でぜひ 加わっていただこうと思っています。この分野では、例えばソニーミュージックという大きな組織も今は全部、分散型のネットワークに切りかわっていますから、現場の仕事ができなくなると、ほかの会社にどんどん移動していくといいますか、あくまで個人の主体になっているんですよ。
 そういう意味では、電通のAさんチームという5人ぐらいのチームが登録してくる 。それは一向に構わない。別に電通とは何ぞやということは、だれも関心がないわけ です。電通のAさんという人が何をしているか、電通総研の吉田さんが最近考えてい ることというのは当然関心がありますわね、そういうことだと思うんですよ。だから 、そういう意味では、肩書として会社の名前は後から入ってくるという形じゃないか なと思います。

【t氏】 今、お話を伺っていて、非常に説得力があるなと思ったんですよ。ただ 、今、自分のやっている事業を見ると、これはお役所をスポンサーにして、国民一般 に対して情報を提供するという性質のものですから、ちょっと難しいなと。初めから 失敗する要因がたくさんあるなというふうに考えていまして、もうちょっと別な切り 口でできないかなということを考えていました。

【s氏】 私も役所の仕事という感じなんですが、先ほどの話では、既存の枠をど う壊すかという形で、相手に対して投げかけて、受け取る側が興味を持って見てもら えると。それが一義的に大事だということだったんですけれども、今すぐそんなこと をしてしまっても、大変な混乱が起きるわけで、それをどう軟着陸させるか。その辺 の時期的な問題ですか、努力はあるんですけれども、それをどういうふうにやってい けばいいかというのが、模索として私もよくわからないんです。なかなか難しいとこ ろだなと。

【河西】 インターネットは結構おもしろい事例があると思うんです。クリントン のホワイトハウスがソックスという飼い猫を出しています、その鳴き声が聞こえると か、あるいはサックスを聞ける、ああいうことだと思うんですよ。あれはインターラ クティブなんですよ。
 でき方自体もインターラクティブで、クリントン政権発足時、イメージアップのため彼らはシリコングラフィックス社でまず記者会見をして、政権方針を出しますよね。同時に記者会見レポートをインターネットで流しますということで、10分後に世界に対して発信したんですね。そのときに記者の人たちが、「それをされるのは全世界の市民にとってはいことだけれども、自分たち記者にもちょっとサービスしてください、もっとインサイド情報をくださいよ」と言ったときに、「じゃ、ホームページに入れるようにします」ということを言ったんですね、ゴアが。
 それはどういうことかというと、記者クラブ制度の破壊です。国家よりも早いCNNを初めとした世界のメディアに対する米政府のカウンターパンチですよ.それに比べて,日本のマスコミは20年は遅れている.元もとGII体制、情報ハイウエイってNTTのINS構想に対する危機感から始まっているでしょう。
 それが最初のきっかけだったと思うんですね。そこからあれだけ柔らかいホワイトハウスのページになっていったというか。

 ですから、一個一個事例をつくりながら、アメリカの政府にしても実験をしながら 進めているというところがあります。そのために、昔のようにホワイトハウスで政権 構想の第一弾をやるんではなくて、シリコンバレーという世界が注目している企業の 庭というか、会社の中でやると。シリコングラフィックス社というのはご存じのよう に、『ジュラシック・パーク』の映画のCG技術を提供したベンチャー会社です。ア メリカ政府自体は軍需産業、基幹産業というものは、ああいうものなんだという頭が あるわけです。つまり、シリコンバレーをバックアップしないと、政権維持ができな いし、新しいベンチャー、創造育成ができないと。


オールクリアするための皮膚感覚

 アメリカで80年代に起こった現象が90年代に日本で起こっていますが、どう軟 着陸させるかというのは、非常に僕も難しいと思います。大前さんに言わせれば、オ ールクリアだと。オールクリアしない限り絶対だめだと。これはこれで筋が通ってい るんです。僕らはそれはおもしろいと思うけれども、一般の市民が政治にそんなに関 心があるわけじゃないんで、我々としてはもっと皮膚感覚で、例えば「フリーランサーの場合は退職金がないじゃないか、年金がないじゃないか」と。
 こういう言い方はちょっと失礼かもしれないけれども、「銀行の人は何でボーナスをもらっているの?」というふうになるわけですよ。我々、国のお金を借りることもできないのに、実際ある程度以上はできないですから。税金を払っているのに還元されないというのはおかしい。600万人で2.5兆円の所得税を支払っているのに、直接還元投資は0です.農業が290万人で2兆円の補助ですから、やはり馬鹿にされすぎてる.ソーホーズからいくら青島や横山が出ても、東京都、大阪府が補助金をくれるわけじゃない。今の住専の問題みたいなもんですけれども。
 そういうニーズがあるんであれば、行政とか政府の人たちもそういうニーズに 対してインターラクティブに答える情報発信をすべきだと思います。つまり、それに 対して共感しました、もっともだと。それに対してどう努力していくかというアイデ ィアとか、例えば、ある財団からレポートを僕はよくもらいます。規制緩和が何で進まないのか。それは別に行政の問題だけじゃなくて、既存の業界のスキームの問題じゃないかと。よくありますよね、そういうことは言ってはいけないらしいんですが...仕事もらえなくなりますから.でも大半の人にはそうした情報さえ来ないですから関係ない。


くり返される「失敗の本質」

 あとは言い方の問題もあると思うんですよ。NHK的な番組で、議事録的なインフ ォメーションを流しても、一般の人はわからないんですよ。僕もそうですけれども、 頭が悪いのか、ぱっと読んで、ぱっと見てわからないとわからないんですよ。言葉と いうのは非常に難しいと思うんです。
 朝日新聞なんかをまじめに読んでいる人はだれもいないと思いますよ、あんなに高 度で、非常に難解な、アカデミックな。例えば、文芸欄を見ても、うちは出版部門も あるんですけれども、5,000部ぐらいしか出ていないような、評論でいうと700 部か800部ぐらいしか刷らないような評論家の人が幅をきかせて書いているわけで すよ。それはだれも読まないです。
 でも、それが800万部維持されているシステムとは何なんだということを僕は考えたほうがいいと思うんですよ。実体はないと思うんですよ。もっと実体経済に近づけた言葉で語りかけていくのがいいんじゃないかと思います。  公共放送と民放、あるいはインターネットのような新しいメディアの中で、コンテ ンツの差を見るとものすごいものがあります。新しい常識、コモンセンスはどこにあ るのかということだと思うんですよ。僕は行政が持っているコモンセンスは、コモン センスでは絶対ないと思いますから、それは現在の歴史が証明していると思うんです 。これは個々の行政のことを言っているんじゃなくて、行政という概念自体がつくっ ている今の構造。
 例えば、国民一人当たり250万円の赤字をどうするのか。だれも解決プランを持っていない状態で、そんな方向に今行っているわけです。行政は、組織自体が失敗的な要素を持っている組織だと思うんです。大平洋戦争と同じ「失敗の本質」ですね。

   前ページへ       次ページへ