SOHO GUILD




 虎ノ門インターネット研究会での
ギルド・カンファレンス
(一部抜粋,95年12月/日本財団)




情報を翻訳するネットワーク

【河西】 いや、情報は発信されているんですよ。ただ、それがわからないんです 。それが理解できないんです。政府広報というのはやっています。新聞を見れば報道 はされています、ある程度は。情報が多過ぎるんです。自分と関係性があるのかどう かすらわからない。高度化情報社会の落とし穴で、情報というのは3年ごとに10倍 増しているんです。インターネットの科学技術系の論文の平均の解読率は3.5人ぐら いでしかないと言われているんです。3.5人しか読まない論文を一生懸命、大学院で 若い学生とか研究者が書いているんです。

【h氏】 そうすると、ここに書いてある組織されていない人、570万人を対象 にして、その人たちに何かの方法で行っていない情報が行き渡るようにするんではな くて……。

【河西】 翻訳です。

【h氏】 情報を翻訳する。それを生協みたいな形でおやりになろうということな んですか。

【河西】 そうですね。今、選挙制度もそうじゃないですか。労組にしても、農協 にしても、次はこの人に入れますよという制度で成り立っているわけですけれども、 それと同じです。この層は無党派ですから、政治に全く関心を持っていない。利害関 係がないわけです。そこで、利害関係をやはりつくるべきだと、税金を払っているん ですから、当然それをすべきだと。でも選挙にいこうというわけではない.
 それと、やっぱりわからないんですよね。国の制度にしても、企業のコンペにして も、そういう情報は当然回ってこないですから、それを伝えてあげる。
 あと、今何が起こっているのか。こういうメリットのあるサービスが世の中にありますよと。これは民間企業がやっていますね。丸井というカード会社であれば、丸井はテレビCMを打ってわかりやすく説明しているわけです。マガジンハウスの出している「ポパイ」という若者雑誌を見れば、非常にプロの編集者がわかりやすく商品をアピールしているわけです。
 そういう努力をして、それでも届かないんですよ。情報というのは発信して届くん じゃないんです。250万分の1のコンテンツができた、じゃ、作業が終わったじゃ なくて、そこからスタートですから、情報をいかに伝えるかというのは、発信が終わ って、アクセスがあって、初めて情報は成立するんです。キャッチボールがないと、 情報は情報ではないと思ったほうが僕はいいと思うんですよ。

【l氏】 ここのギルドの設立趣旨というのが書いてあって、今、ご説明を聞いて 何となくぼやっとした形ですけれども、わかったような感じがします。この趣旨とい うのはどういうメディアを使って……やっぱりインターネットを使って流すんですか。

【河西】 便利なのはインターネットですね。

【l氏】 そうすると、先ほどの朝日新聞を読まない人は、ここに書いてあること は非常に難解だからわからないと思うんですよ。全く労働組合の主張みたいな、何と かを主張するとか、積極的に連帯・融合を図りとか、こういうことを壊さなければい けないと言っている人が、こういう文章を書くということが、僕は非常に意外という かね。

【河西】 これは内部文書ですから(笑)

【l氏】 だから、どういう形で、CD−ROMを使って流すのか、あるいはこの まま流すのかわかりませんけれども、説明を聞いてやっとわかったような感じがしま すが、まだ僕も100%わかったとは言えないでしょう。それが1つです。  それから、言われていた趣旨というのは、人があたかもかたい文章だと読まないと いうふうに思っていらっしゃるけれども、250万分の1でもいいですが、何人かが 読むわけでしょう。それに向けて発信することもきめ細かく必要だし、まさにそうい うためにいろんなメディアが広がるということもいいんではないかなと思うんですよ 。250万分の1でどれだけ自分の番組をアピールするか。どれだけアピールするか というのは、たくさんの人が見るということだから、これはマスにつながるわけで、 何かそこら辺がちょっと僕の頭では理解できなかったんです。

 もう1つ、私の言いたいのは、将棋というのは二人でやりますけれども、それをも のすごいたくさんの人とやっているという理解の仕方をしたんですね。将棋とか碁を やらない方はわからないけれども、二人で対戦しているわけです。二人でやっていて も、頭で相手がどういうふうに出るかというのを考えているわけですよ、こっちとし ても。向こうも考えている。でも、手を指していかなければいけない。
 今、言っていらっしゃることというのは、こうやっていかなければいけないと。大 前さんなんかがそういうことを言っているというふうにおっしゃって、何となくわか るような感じがするけれども、情報だけで人は飯が食えません。

 大蔵省のお金の使い方が必ずしもいいとは思わないけれども、日本の公共投資なんかも遅れているし、情報をアクセスして情報はとれるけれども、こういういい旅館があるといっても、そこへ行かなければならない。頭で、バーチャルリアリティの世界でそこへ行って、ああ、いい気分になりましたということはないんで、そういうことがあるかもしれない。そこへ行くためのアクセスをする。実際に行くための車も必要だし、道路も必要だし、ガソリンも必要だしということだと思うんですけれども、1日中、情報の洪水の中 にいれば自分は幸せかというと、そうでもないと思うんです。そこら辺をどういうふ うに考えていらっしゃるのか。必ずしも僕は否定しているわけではないんですけれども。

【河西】 ですから、情報はもうみんな要らないんですよ。それはさっき僕が話し たように、情報は要らないから、250万分の1というのは、最初からアクセスがほ とんどないと考えたほうがいいということをお話ししたんです。そのために今、コン テンツでどういうふうに自己アピールを、カラーを出していくかということを。
 例えば、芸能界を見ていると、今、約3,000人ぐらいの人がいろいろ表現してい ます。ところが、出てくる人というのは、似た人が多いです。新たに名前を覚えても らうためには、非常にみんな努力をして、自分のカラーを、マイナスポイントも含め てセールスをかけて覚えてもらっているんです。つまり、人の個性とかカラーとか、 そういうふうなものを出していかないと、記憶にも残らないというか……。

【司会】 少しフォローというか、わかりやすくするために。アウトプットは多分 これなんですよ、勝手に解釈して。こういう事務所がインターネットの中にあるとい うことでしょう。要するに、ここにアクセスさえすればいいという状況としての企画 なんですね。

【河西】 これは一般向けというよりも、ギルドですから、組合の機関誌だと 考えてもらったほうがいいんですよ。仕事をやっていく上で、あしたまでにイラスト カットを入れなければいけないんだけれども、急に人がいなくなった。イラストカッ トを入れたいときに、イラストのところをクリックすれば、がっと作品が出てきて、 この人に連絡をとってメールを送れば、連絡がとれる。お互いにギルドに加盟してい るとなれば、ある程度安心感があるわけです。
 全然知らない人間にやる、あるいは会社対会社の取引となると、どうしても身構え る部分も出てきますから、それは同じギルドの中の仲間だねということで、お互いに 交流し合える。これは目的意識が高いですから、目的意識の高い電子ギルドの中での 選択別事業というのは当然ありますけれども、それはこの中に書いてあります。基本 的には、仕事をやっていく上で、生活をバックアップしてくれる機関があるんであれ ば、できる範囲も決まっています、ある程度それは。ただそれでも、公共情報から民 間情報をわかりやすく伝えてあげないと、ちょっとわからないんじゃないかなと。

【y氏】 私は外人ですから、全部理解できませんでしたけれども、最近、情報情 報と日本で使いますけれども、それはインフォメーション・オブロと言いますね。イ ンフォメーション・オブロよりも、人間が変わってきたんです。どうして変わってき たのか。エコロジーと機械とアジャスメントが変わってきたんです。最近、人間はノ リッジです。情報はノリッジとウイズダム、ジャッジメントできないんです。人間は フィーリングと英語で、センス・プロセプションです。インプリフォで情報をあれし て、それを繰り返してノリッジする。
 ですから、最近、テレビを見てもあんまりおもしろくない。どうしてか。それはた だエンターテインメント、情報じゃないんです。人間のレベルが大分上がってきてい るんです。それで情報よりもノリッジがサカイしているんです。じゃ、どうしてか。 それがブラビケーション。最近、機械をいじると、どうしても人間の体が変わって、 ブラビケーション、それがほんとうかうそか確かめるんです。自分だけじゃなくて、 みんなでインターネットを使用すると、それがノリッジと思っています。

【司会】 深い話ですね。難しい。

【k氏】 私は国際交流基金という特殊法人で、来年度からインターネットのホームページをつくるという話をしています。そういう意味では、非常に耳が痛いというか、どう いう形でやっていったら見てもらえるものができるかなということを非常に考えさせ られました。ただ一方で、確かに個人もしくはネットワーク上での新しい世界という のがありながら、他方、急激にがらっと変えるというのはすごく難しいことだと思い ます。そのバランスをどうやってとっていくのかなというのをちょっと考えたいなと 思っています。

【h氏】 ばか番組ばっかりできたらどうするんだという話もちょっとあったんですが、 私はばか番組さえできないんじゃないかなと思っていまして、逆に楽しい番組ができ るんであればいいと思います。ケーブルテレビみたいにソフトもできないで、映画ば っかり流しているような状況になることのほうが、私は怖いなというふうに思います。
 私はたまたま労働組合をやっていますから、フリーワーカーズとか、クリエイター ズの方は逆に楽しくやらないと。もともとこういうのを自分たちで演出できる人たち でしょうから、インターネットにわざわざ入って、組織でそんなところまで束縛され てやるかどうか。もしくはほんとうに楽しいということがキーワードに入ってくる可 能性があるので、そうすると、今度は社会的な意義はどうなのかとか……。

【河西】 楽しいものを目的にやっている人は既にやっています。それに欠けてい る部分をここでということなんです。

【h氏】 そういうところの社会保障とか、我々がやっている労働組合の人たちは 、ある意味でいうと、オーソドックスな人たちの集団と思われていますので、非常に 関心もあります。そういうことが好きですけれども、活字もきちっと読む人たちが比 較的多いと。ただ、そういうことをイメージだけでとらえるような人たちですから、 そういう人たちに対してどこまでできるのかなというのがあると思います。
 あと、私たちの組合関係でいいますと、ハードの部分も今、企業で社内LANと一 人1台コンピュータというのは普及していますから、その企業内組合という日本の労 使協調路線にそのまま乗っていくと、インターネットとかは非常に使いやすい背景は あります。ただ、個人においてインターネットを使ってやっていくというときに、ハ ードの部分ですとか、そういう費用の部分ですね、問題があるのかもしれないなと。 私はこれを見て非常に楽しそうだなという印象は受けました。

【n氏】 私どものMCAという会社、ミクロ・コスモス・アソシエイトの略なん ですけれども、もともとうちの根底に個の集合体という感覚があって、大企業のサラ リーマンとかいうような考えではなくて、みんなが独立事業主の集まりと。社内も事 務とかそういう部分は普通の会社員というか、OLというか。ただ、事業を推進して いく側はみんなが独立事業主であると。それを内部と外に対してもそういった方々に 呼びかけてネットワークをつくっていく。
 それは今まではペーパー、電話、FAXとか、道具はそういうことでやっているん ですが、それをインターネットを含めた通信に置きかえていく。今の情報生協という ギルドのお話は非常にインパクトがあったんですけれども、そういった部分と何らか リンクしていければ、私どもも非常に先が見えてくるなという感じも若干しながら聞 かせていただきました。

【o氏】 前回、この会に出まして、最後の結論が、先は真っ暗やみだと専門家の 方が言われました。全く電気が切れた部屋をこうやっていくようで、その先はわから ないという話で途方に暮れました。きょうも話を聞いていたら聞くほどわからなくな って、大変刺激になりました。大変にいい会だったと思います。


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