SOHO GUILD




 虎ノ門インターネット研究会での
ギルド・カンファレンス
(一部抜粋,95年12月/日本財団)




【p氏】 最近、インターネット等をてこにして、大学生が起業するというような 話を取材しています。若い立場を利用をしてインターネットの創世期に立ち会って、 それの形成に参加していきたいという学生の方々とお話をする機会がありました。そ ういう人たちが抹殺されないためには、この GUILDみたいなのがあるといいのかなという印象を受けたんですけれども、なかなか話が難しくて、わからない部分もありました。
 ここにも書いてありますけれども、終身雇用が崩れている中で、学生時代にやった ことをそのままビジネスにしたいという人が多分増えてくると思うので、こういうギ ルドのようなものが、どういう形になるのかよくイメージをつかめなかったんですが 、出てくると、それと相まってうまく社会に入っていけるといいなという希望を持ち ました。

【s氏】 大変おもしろい話をありがとうございました。コミュニケーションと いうのは普通、人間が1対1対でしゃべるんですけれども、インターネットのような コミュニケーションは今までにないので、どのようなものになるのかとよくわからな いんですが、きょうお話を聞いていて、質の高い低いというお話とか、いろんなこと を聞いているうちに、競艇場に行くと予想屋とかいろんな人がいるんですが、それを 思い出しました。人気のある予想屋には人が集まって、ファンも一人一人みんな勝手 に予想しているんですね。競艇場のあんなような感じのイメージなのかなと、少しそ ういうようなヒントをつかみました。
 もう1つ、インターネットがこれからだんだん進んでいく中で、やっぱり日本人に とって自己表現ということに対してブレイクスルーがないと、非常に先行き寂しいも のがあるのかなということも同時に感じました。うまく言えないんですけれども、自 己表現が日本人は苦手な分野なんじゃないかということを、たまになんですけれども 、ホームページのデザインとかを見ていると、これはやっぱり違うなという印象を受 けました。

【f氏】 私の属している社会の中では、河西さんのお話は少々過激だなという印象を受けました。日ごろ、こういった形でインターネットというキーワードについて、いろいろな業界の方とお話をする機会があるということは、自分にとってもすごく勉強になると 思います。

【u氏】 ギルドの事業の中で、情報の共有化がどこまでで きるか、情報をどのくらい出していただけるのかというところが非常に問題なんじゃ ないかなと、1つは思いました。そのあたりをどのようにクリアなさっているのか。

【g氏】 今、業界と言われる団体向けにFAXニュースを流しています。いわゆる業界の団体がこんなことをしていますよということをいろいろ流して、皆さんのいろいろ周知を図るというようなことを、うちのセクションじゃないんですが、別のセクションでやっています。
 それを見て私も思ったんですが、団体が何をやっているかなんて、あんまりおもし ろくもくそもないんですね。大体、何となくこんなことをしているのかなということ が具体的に文字になっているだけなんで、あんまりおもしろくないなと。実際、もっ と知りたいのは、そこの団体の何さんが果たして何をしているんだと。いつこの人は 結婚して、だれとつき合ってどうなったのかという、個人情報をほんとうは知りたい なと。そういう方向で、もっとおもしろいほうにできないかなという話を前にしたこ とがあるんです。全く、インターネットといいましょうか、ネット上も同じ世界だな と。電通の吉田さんが何をしているか、ほんとうに確かにそのとおりだと思っています。

【o氏】 先ほどのお話では、未来社会というか、それが外的要因によって変わる ので、別に内的要素によって変わるんじゃないというお話だとすれば、別に内部から 心配しなくても、外的要因で変わってくるんじゃないですか、その組織が。だから、 そんなに心配することはないんじゃないかなと。

【y氏】 世間一般で、実際にどういったものに興味を持ってもらって、アクセス してもらうためには、うちが何をしているのかというのが基本的な状態では必要なん でしょうけれども、興味を持ってもらうためには、やっぱり顔が見える情報じゃない と、価値といいましょうか、皆さんには受け入れていただけないのかなと。今、ウチではいろいろと変な話があるんで、受け入れてもらうことがまず一義的な目的 と考えますと、やっぱり顔が見える方向で、社会が変わる前に内部の人間が変わらな いといけないのかなというふうに思いました。

【t氏】 このギルドのお話を伺って、これからは情報の翻訳とか情報のフィルタ リングというのがおもしろい商売のネタになっていくんだなと思います。何でおもし ろいと思うかというと、いろいろ理由があるんですけれども、1つは、しばらく前ま でインターネットの世界というのは、マスコミのフィルターがかかっていない情報を 得られる場所だと。積極的にこっちから情報を持ってこれる、良質の情報を持ってこ れる場所だと思っていました。しかし、これだけ普及してくると、情報の洪水という ふうに言われていますが、ノイズのほうが大きくなってしまって、情報というけれど も、あってもなくてもいいような情報がほとんどだと思うんですよね。
 そういう状況になってくると、今度はたくさんある情報にフィルターをかけていく 、あるいは翻訳していくというのがキーになってくる。そういう意味で、これは非常 におもしろい仮説だと思うし、いろんな仮説とかアイディアがあると思うんです。組 織や会社の枠に阻まれて、それが実行できないというのはそのとおりだと思います。 お先真っ暗だということがありましたけれども、真っ暗なときはそういう仮説とかア イディアを試して、先に何があるのかサウンディングしていくことがすごく重要だと 思います。何かうまい工夫ができないかと思うんです。自分の状況を見ると、なかな か組織や何かに縛られているなということを実感しています。

【k氏】 今、インターネットをアクセスしてもあんまりおもしろい情 報がないと。周りに聞いてもほとんどそう言っているんですね。それと、フォーラム に入って、話をしようとしても、正直、ちょっと寂しい限りで、内容が低くて、本気 で入る気にならない。そういう意見を多々聞きます。そういう意味で、今日、テクニ カル的な情報を発信するときのインパクトという意味では、ものすごく僕は勉強にな ったんですが、おもしろければさらにいいでしょうし、それに加えて価値のあるとい うんですかね。
 それともう1つ、倫理観と哲学が感じられないことが多々あります。新しい時代の 倫理観、哲学、ビジョンみたいなのが、マルチメディア文化の中でどういうふうに育 っていくのかを見ていきたいなと。自分もそういう中で何かできればなという感じで すかね。

【a氏】 ギルドはクローズドなネットですよね。ここに登録している人たち、メンバーの人たち同士の情報交換及びワークシェアリング?

【河西】 ギルドというのは、インターネットで通じているんじゃなくて、あく までベースはオフラインの普通の日常活動です。インターネットというのは、公開さ れているメディアですから、情報を出すことができる。まず発信できる。つまり、発 信したくても発信できない人が今まで多かったんですよね。いわゆるメディアの独占 というのが個人のレベルまで落ちてくることで、独占状態がなくなっていくわけです 。価値観の多様化は当然してきますから、そういう意味ではギルドは情報発信すると きにインターネットを使っていく。
 あと、クローズドな部分では、BBSにリンクして、それはクローズド情報として 取り扱ったりやっております。

【a氏】 これ、メンバーたちのプロフィールとか何だとかを……、いや、コンテ ンツないしはクリエイター系の人たちに仕事を依頼するのというのはきっとこのメン バーじゃない。もちろん、メンバーの人たちもいるんでしょうけれども、メンバーじ ゃない人たちのほうが多いと思うんです。彼らが仕事を依頼するときに、使えるよう なシステムだったほうが、これからの社会にはいいのかなという気が何となくしたん です。

【w氏】 河西さん、どうもありがとうございました。今、うちのほうではエンブ リッジという言葉が1つのキーワードになっています。これは一体何かというと、ま ず20世紀と21世紀をつなぐ。それから、世代をつなぐ、異文化をつなぐ。そして 、民間企業の方もいるし、政府系の方もいるんですが、それぞれのセクターをつなぐ 。いろんなものをつないでいこうというのがその言葉には込められていると。
 先ほど、ばか番組ばっかりとか、金太郎あめみたいなコンテンツのホームページが 非常に多いような話がありました。また外的環境、いわゆる外圧で変わっていけばいいじゃないかという話がありました。日本の国家行政を見てもそうですけれども、外圧があったからといって、本質論そのものが変わっているわけではないですね。建前を合わせているだけです。
 うちのほうは、そういった意味では、まずは意識改革をして、これから質的な改革をしていこうというふうに思っているんです。さっき言ったエンブリッジの話じゃないんですが、そういったスタンスでこれからはやっていこうと思います。

  【司会】 僕は情報という部分での専門家ではないですが、そこで1点、インフォメーションとかインテリジェンスという言葉遣いで、僕はちょっと違う言葉の使い方をしていまして、それだけご紹介しようと思うんです。
 アフォーダンスというやり方をするんです。「物が実際に存在している場合は、アフォーダンスを発している」わけです。例えば、「この缶は飲んでくれとか、おいしそうとか、そういうものを発している」。先ほどの話では、戦車が存在するというのが、何らかのアフォーダンスと僕らは使い方をするんですけれども、それを発していると。それを見て報道する、あるいは人に伝える、その事実を。それを僕らはインフォメーションという言い方をするんです。その解釈をインテリジェンスないしはナレッジという言い方をしていて、ちょっと切り分けているということだけご紹介しようかなというふうに思いました。
 きょうは1つのテストケースとしてお話ししてもらったんですが、マスを指向するんですけれども、特定のユーザーグループを想定した話なんですね。そういう中で、ライフスタイルを打ち出して、ギルドというのはシンボル、シンボリックなものをマネジメントしていく。共有意識をつくっていくというところが、バーチャル・コミュニティを生み出しているインターネットの中での1つのキーポイントであるということは、間違いなんじゃないかなというふうに感じました。どうもありがとうございました。
                                   ──了──

*このテキストは虎ノ門インターネット研究会の了承を得て一部修正をして再録させていただきました。ギルドの持つ問題点と方向性について少しでもご理解して頂くための参考になればと思います。関係者のご協力に感謝致します.(事務局/河西保夫)


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