全国には800万人のベンチャー、
 クリエイター、自営業オーナーがいる。
 SOHOの時代が再び戻ってきた!


 1919年、東京俸給生活者同盟会というサラリーマンの組織が発足して80年。郊外のしゃれた戸建ての賃貸ハウスから電車で都心まで通うという、全国でまだ当時7%程度しかいなかったという先端的ワークスタイルが、その後急速に一般化したはご承知の通り。
しかし、戦後復興、バブル景気を通じて世界史に独特の日本的行動様式を残したこの集団組織的ワークスタイルも、登場から1世紀を経ずにして、いま過去のものになろうとしている。
 同年、大蔵省印刷局で始まったパートタイマー制度もそうだが、現代に通じる都市型モダンライフのスタイルを考案した大正時代のプランナーたちが、現在のSOHOの台頭を目にしたらどう感じるだろう。やはりモバイルやネットで情報発信するだろうか?
 SOHOという言葉が日本語として登場してから4年、SOHOブームが単なるブームではなく、ワークスタイル自体の本質的進化であることは今さら説明する必要はないだろう。
 各分野のSOHOによって新たにメールマガジンが毎日20誌以上も創刊される現在、ネットユーザー1200万人のコモンセンス(常識)や生き方についての価値観は変化せざるを得ない。
 ここ半世紀ほど、働く人(ワーカー)の基本的なスタイルは「外に出ていく」ことであるという常識があった。しかし、80年代以降のFAX、コピー機、パソコンやインターネットによるテレワーク支援商品の普及で「外に出ないで働く」ことが技術的にも可能になったことの意義は大きい。

●IT(Information Technology)の進歩
●価値観の変化(SOHOによるCO2抑制などの環境問題、自己実現、プロフェッショナル志向のワークスタイル)
●リストラによる企業のダウンサイジング(間接費、人件費削減、企業年金や退職金制度の崩壊、終身型から裁量契約型への転換、In-company制度/社内分社化、SOHOアウトソーシング)
●在宅女性、障害者、NPOの社会進出
●高齢化社会(共同体、父性の見直し、家族復興、ボランティア)
●インターネット革命(情報発信者の爆発的増加、2億人EC市場の登場、仮想会社、サイバー政府、国際NPO)等?

 他にも多くの要素はあるが、先進国に共通するSOHO現象の背後には、明らかに企業を中心とした大組織のもつ生産性優位の資本主義的価値観が、高度な創造型消費者(プロシューマーズ)のもとめるニーズに対応できなくなったことがある。
 さらに、それぞれの事情で職場社会と離れざる得なくなった人たち(出産、主婦、介護、中高年退職、障害)にとって、SOHOの新しいオルタナティブな(もう一つの)ワークスタイルの可能性は無限だ。
「Small Office, Home Office」の語源通り、都心部に出なくても自宅の近所でオフィスを構えたり、家の中のHO空間(机だけでもベッドの上でもかまわない)、リゾート地や車中のモバイルSOHOで仕事をすることができる。この「時と場所に制限されない新しい働き方」が持つ革新性は、大げさでなくかっての蒸気機関の発明や重力から人が飛び立つこと以上に、これからの人類史に大きな影響を与えていくだろう。
 ちなみに、国内のSOHO主要機関は40団体を超え、検索エンジン(Goo調査)でSOHOキーワードヒットは約2万6000件を数える。また意外なことに、全国にはすでに800万人の自営業オーナーがいて、10人以下のSOHOが全国に530万カ所、約1700万人のSOHOワーカーがいる(総務庁98年)。 実は、SOHOは小さいけれど巨大なのだ。

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河西保夫( SOHOギルド代表)
「SOHO STYLE1999年保存版」より

Small is Beautiful!


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