SOHOの歴史
SOHOの歴史
SOHOの歴史は60年代の「対抗文化」とともに始まったのかもしれない
「ギンズバーグが「私は見た」と叫んだ時代
ティモシーリアリーが「ターンオン!」と世界に呼びかけた時代に
SOHOのスピリッツは生まれていたんだと思う
(河西保夫 1998年編集版)
*2006年現在 グーグルの日本語SOHO検索は8,750,000件突破。このテキスト制作時の8年後に486倍のキーワード増加となっている。仕事でインターネットを活用する人口は、国内で10倍の3000万人規模を超えている。
まさに我々は、トフラーやシュマッハーが予言した「スモールオフィス革命」の真っ只中にいるわけだ。
●「就職しないで生きていく」
1960年代末期~1970年代
フリーランサー誕生と第1次SOHOブーム
・「マルチメディア」という言葉を使った「Summer of Love」というサイケデリックな音楽イベントが開催され、ヒッピーが全米・欧州全域に拡散アムステルダム、ゴア等の聖地が登場。
・パリ五月革命」「ウッドストック」「文化大革命」「プラハの春」等の都市の革命頻発。
・ 国内では東大、日大全共闘による「安田講堂事件」「神田カルチェラタン」「新宿フォークゲリラ」等の若者反乱で最初の『就職をしない若者たち』が登場。
・『平凡パンチ』『ガロ』『少年マガジン』全盛期、深夜放送のDJ文化、ミニコミ誌が登場、初期のSOHOファッションスタイルをVAN、コムデギャルソン、ケンゾー等が提唱。
・ アポロ11号月面着陸、フラーの「宇宙船地球号」思想、マクルーハンの「グローバルビレッジ」思想、キューブリックが『2001年宇宙の旅』(クラーク)を映画化、「成長の限界」が国連やローマクラブなどで討議される。
・対抗文化を取り込んだ『スモールイズ・ビューティフル』が企業の標語になった最初の時代。
・ アランケイがパソコンを開発、米国防省ARPA-NET(インターネットの前身)稼働、LSI量産、ISDN概念登場、SONYがNY上場、企業の国際化がブームに。
・英国BBC「モンティパイソン」放送、国内では「ゲバゲバ90分」などポップ&サブカルチャー全盛。
・ 学生運動の先鋭化と終焉、東京大学自主講座(宇井純)の「公害論」など市民セミナー、「ロッキード事件」(立花隆)抗議などNPO活動が全国化、反原発・エコロジー運動が大衆化。
・ 『ぴあ』『シティロード』『プレイガイドジャーナル』『宝島』『ビックリハウス』など、フリーランサー(SOHO)文化を提唱する若者情報カタログ誌が台頭、『アルバイトニュース』『リクルート』等の求人産業システムが確立し、自由契約労働が一般認知。
・通産省のベンチャー支援政策も開始され、脱サラブームで工場型の画一的組織からエスケープする『第1次SOHOブーム』がピークに。
●「おいしい生活」と情報化社会へ
1980年代
フリーター誕生と第2次SOHOブーム
・「地方の時代」ブームとは裏腹に、情報トレンドの東京一局集中化現象と消費市場が本格的な「選択率需要の時代」に突入。『なんとなくクリスタル』(田中康夫)を皮切りに若者のライフデザイン市場が主導権をもつ、SOHOアウトーソーシング時代が始まり、企業外のコピーライターやプランナーがマーケティングを先導。クリエイティブ業界ではインディーズが全盛で、軽薄短小で市場的な『第2次SOHOブーム』が到来
・SOHO的ライフスタイルを決定づけた西武百貨店、パルコの「おいしい生活」(糸井重里)、ウディ・アレンの映画、マガジンハウスの『ブルータス』『アンアン』、フジテレビ、等の80年代後期のバブル時代を導くおしゃれ指向の高度消費主義が全盛。男女雇用機会均等法も登場し、転職や専門職プロ指向が強まる。
・初期の学生ベンチャー、カタカナ文字職業ブームに続き、トレンドシステム解体指向の『業界君物語』(いとうせいこう)も登場するが、85年のプラザ合意以降の「グローバリズム」の台頭で、逆にバブル時代にベンチャーは失速、民営化NTTが就職人気第1位だったりする。ニートの先駆的存在である、おたくの祭典「コミックマーケット」が 巨大化。
・デジタル方面でもマッキントッシュ(アップル32ビッド)、NTTのキャプテンINS実験、光ファイバー構想、TORON計画(坂村健)が発表され、YMO、映画『ブレードランナー』、ウイリアム・ギブソン等の『サイバーパンク』ブームが「レトロフューチャー」を予言。ニフティのパソコン通信登場で、初期のバーチャルコミュニティが定着。
・消費者にアイデンティテイの獲得を求め「自分探し」や「自己実現」を強いる高度な成熟情報型消費のバブル時代は、90年代には失速し、オウム事件、カウチポテト、安近短、洗脳、自己変革セミナー 等、パソコン世代に顕著なカルトで「自己完結型の物語、幻想」に逃避する若者が社会的に批判されるようになる。
・『就職しないで生きる』(レイモンド・マンゴー)、『ワーキング』(ターゲル)、『第三の波』(トフラー)『シャドウワーク』(イリイチ)、『構造と力』
(浅田彰)、『チベットのモーツアルト』(中沢新一)、『柔らかい個人主義の誕生』(山崎正和)等のSOHO的思考がブームとなる。
●SOHOの歴史的な流れ~日本SOHO協会設立関係者の活動
1980年代前期
・東大自主講座(市民開放講座)でオルタナティブな「大学解体論」(河西)
・リクルートに対抗、脱就職活動を提唱してUPU創設(広本)
・学生ミニコミブーム、河西がプレスクラブ(現クラブハウス)設立。*キャンパスブーム *新人類ブーム
・『スタジオボイス』で「フリーランサーとして生きる」特集制作(河西)
・国内初の全国大学5000サークル電話帳「CLIP」発刊(河西、学生援護会刊)
・リクルートの「フリーター」ブーム。「an」(日刊アルバイトニュース)新創刊、
「フリーワーカー宣言」全国展開(河西、クラブハウス、学生援護会)
・中小企業・ベンチャー向け「月刊ベンチャー・リンク」創刊(ベンチャー・リンク)
・ニューメディア関連マーケティング研究所、プロトコル設立(いわきテレワーク)
・「フリーワーカー・ネットワーク87」開催(秋元康、島森路子、他/学生援護会・松下電器後援、クラブハウス)
・同、SOHO・若者参画による「Pnasonicキャンパス&TYOネットワーク」 以降各種商
品開発プロモーション、「POPEYE」誌デザインオブザイヤー連続受賞(87~93年)
・国内初のフリーランサー向けクレジット「CLIP・DCカード」発行(河西、藤倉)
・郵政、SOHO・学生向け家庭用ビデオテックスNTTキャプテン機運用(テレフォニー、クラブハウス、ネクステージ) *市民参加型の市場形成、噂クチコミブーム
・空間創造研究所設立(斎藤)
1990年代前期
・日本サテライトオフィス協会設立(日本電気、鹿島建設、IBM、NTT、他/国土、郵政、通産、労働各省)
・国際フレックスワークフォーラム設立(生産性本部、住友信託、リクルート、日生基礎、他NPO)
・いわきテレワークセンターが「いわきコルム」内に設立。
・大前研一が一新塾、アタッカーズスクールを設立(平成維新の会、河西)
・阪神大震災では全国からSOHOが神戸元気村等に結集。インターネットが効果発揮。
・東京ドームシティ解放計画「大人の夜の遊園地ルナパーク」(ユネスコ後援、91~94年)で市民や消費者が学園祭方式で自主管理的にイベントを運営し、前年比4倍動員。4年で100万人が参加。(クラブハウス、河西)
●世界標準となるSOHOスタイルの時代
1995年~2001年
インターネット経済の誕生と第3次SOHOブーム
●1995年~96年
・NYのマンハッタン南地区(シリコンアレー)のSOHO街を核にした、コンテンツクリエイターたちのデジタルブームでインターネット・マーケティングをテーマにしたSOHOブームが上陸。
・NY市の EDCと Alliance(NPO)がSOHO街を核にしたダウンタウンにコンテンツ産業を誘致集中させるITD計画を実施。通信環境の整備、家賃負担、SOHO電話帳編集、各種起業支援で「シリコンアレー」創出に成功。
・『インターネットマガジン』が初のSOHO特集掲載(インプレス、95年)
・SOHOコンソーシアム「ジャパン・マルチメディア・ギルド」、ぴあ、アスキー、他、通産省「エレクトリック・コマース」実験に申請(95年)
・米IBM、マイクロソフトが日米欧州の30人以下のSOHO5000万社を次期戦略市場に。
・国内初の女性向けホームページ開設(エイガアル)
・日本初の女性向けパソコン情報誌「パソコンスタイルブック for Women」(技術評論社刊・エイガアル)
・SOHOギルド、ホームページ開設。
・マルチメディア・SOHO団体各社、政府系マルティメディア事業受注活性化。
・JASレインボウ777機体『インターネット・デザイン・コンペ』 ~世界40カ国から1万作品参加。国内便に作品採用777ジャンボ機が就航米(米ヤフー、クラブハウス)
・日本版「Summer of Love」ともいえるイベント『レインボウ2000』開催。昼夜2万人が富士の日本ハイランドに結集。
・総選挙・与党経済福祉研究会総会(呼びかけ人:橋本首相)がSOHOギルドを招待。
・産経新聞一面にてWANA関西が、朝日新聞一面にてギルドが、SOHO活動の同日全国報道で一般認知へ(96年11月)
・有明レインボウタウンで1万人参加規模の『レインボウマーケット』(
・有料webメールマガジン各社が創刊、『JNEWS LETTER』創刊。
・エンジェル投資のインキュベーションサーカス設立。
・キンコーズが首都圏展開に戦略変更。
・日比谷プレスセンターのジャーナリズム研究会で記者向けセミナー(河西)
●1997年
・イトーキが銀座にアンテナショップ『SOHO`s 』開設、コクヨ「SOHO便利帳」サイト開設。
・NTTと札幌のSOHOベンチャーの共同開発ルーター『SOHO MN128』ブレイク。
・国内初のSOHOメーリングリスト開設(クラブハウス、ネクステージ他)
・週刊メールマガジン『SOHOニュース』創刊。
・NHK総合TVで初の総合的SOHO特集番組(55分)放映。
・ギルド、ショウビズ芸能系SOHO共同出版「メディアガールズ97」(クラブハウス刊)で新人タレント300人紹介。
・幕張「COMDEX JAPAN97」で初のSOHOカンファレンス開催(日本シスコ、ギルド他)
・松下電器『P-CASE』クチコミでブレイクし、SOHOインテリア家電の定番アイテムに(ギルド)
・郵政省、他「国民的テレワークデイ」実施、SOHO各団体が『SOHO Action』を呼びかける。
・大蔵省、戦後初の未公開株式市場を認可、Dブレイン証券設立。
・「まぐまぐ」が京都府SOHO支援拠点のリサーチパークでサービス開始。
・原宿商店街連盟で、野村総研、NTT他がSOHO研究会、ヒラマツのネットカフェ『カフェデユプレ』人気に。
・「クアーズ・レインボウマーケット」開催で20万人SOHOキャンペーン(東京都、デユアルシステム、ギルド)
・幕張「ワールドPC EXPO97」でSOHOカンファレンス(コクヨ、イトーキ、オカムラ、ギルド他)
・NHK総合7時のニュースで初のSOHO報道 (河西インタビュー、ギルド)
・ネクステージ他が全国D-ONE事業協同組合を通産省認可で設立(藤倉)
・コナミ社サイバーショップをクラブハウス、ギルドが本格運営開始、SOHOから新人ゲームプランナーを発掘。有明の「東京ゲームショウ」が20万人規模に。
・富士通、日立SOHO、マイクロソフト、NTT各社のSOHO向けサーバー、PCキット代理店販売を強化。
・日立・ギルド提携「MPEG&SOHO」で40万人Eメール、主要SOHOサイト10番組共同バ
ナーキャンペーン(この頃webでSOHO団体40番組を超す)
・建設省系SOHO都市開発委員会(荒川広域流域・SOHO川の手がコンセプト)
・初のSOHO月刊誌『SOHOコンピューテイング』創刊(サイビズ)
・SOHO・ベンチャー週刊Webマガジン『オンラインマガジンべんべん』創刊(ベンチャー・リンクグループ)
・イージーインターネット協会設立(インキュベーションサーカス)
・女性のためのネットワーキングフェアで「W-SOHO」ブースに3000名以上が来場(エイガアル)
・国内初の『Women`s SOHO Yellow Page97』を出版(エイガアル)
・NY市EDCとAllianceが不動産業界を巻き込んだITD計画の広報「Plug`n go」キャンペーン実施。
・初期SOHO研究レポートを博報堂、通産省、矢野経済研究所、他が制作。
●1998年
・インターデコール、イデー、無印良品計画等のインテリア空間系企業もSOHOシフト。
・読売、毎日、朝日、日経等、全国紙が波状的SOHO企画報道を展開。
・在宅ワーク主婦向けのSOHOテレビCFが話題に(日本電気、アトリエコスモス)
・「アクト・フォア・テレワークミーティング」開設(日本IBM事務局)
・『SOHO独立開業ビジネスの素134』出版(JNEWS ・ギルド)
・『SOHO WORKS STYLE』パンフ全国SOHO110拠点協力でPR配布(日立・ギルド)
・生産性本部、IFF「テレワーク・SOHO合宿研究会」(葉山国際村)
・ギルド・各種デジタルスクール提携「MPEG&SOHOセミナー」東京、横浜、大阪で計16回開催。
・SOHO近未来研究がシンクタンクで活性化、「2010年研究会」(三菱総研、ギルド)他。
・SOHO YOKOHAMA INCUBATION CENTER開設。横浜旧シルクホテルが全室SOHO共同オフィスに。
・ギルド、赤坂でSOHO実験開始。Eメール所有国会議員アドレスをサイトで一般公開。
・三鷹SOHOシティ(三鷹市財団運営)設立。
・住宅都市公団が2回に渡るSOHO調査報告を発表。
・郵政省後援「SOHOデジタル仕事術セミナー」全国規模で開催(日立、ギルド、デジタルハリウッド、SOHO YOKOHAMA、神奈川KMC、他)
・SOHOギルド他が日本SOHO協会準備委員会活動開始。郵政省、大蔵省に「PC減税」「SOHOコンテンツ支援」を要望、大蔵省令「PC減税」政策実施。
・自由党「明日の内閣」でSOHO研究会(ギルド)、他政党でも私的SOHO研究会開催。
・自民党SOHO議員連盟準備会を発足。
・『アンアン』『ブルータス』等でSOHOインテリア特集、アップルがiMacを発売。
・「日刊SOHO'S REPORT」創刊(SOHO'S WORLD、SOHOWEST、SOHOアジア、SOHOビレッジ他)
・インフォシークのSOHOキーワード検索でヒットが18.000件突破。
(以上、テキスト制作 1998年)
*1999年、河西が呼びかけ人となり、日本SOHO協会を設立。翌年、財団法人となるが、2004年、河西をはじめ設立時のSOHO運動メンバーと支援してきた企業、学者の多くが協会を離脱する。日本政府は、1999年に国会で約束した「500万社SOHO事業者の活動内容情報の開示を進める事業者ディレクトリ」の構築公開をいまだしていない。日本国内には、いまだどのくらいの事業者が存在しているか、実態把握も不明である。
*2006年現在 グーグルの日本語SOHO検索は8,750,000件突破。上記テキスト制作時の8年後に486倍のキーワード増加となっている。
仕事でインターネットを活用する人口は、国内で10倍の3000万人規模を超えている。